企業に注目されるオープンソース

~ オープンソース入門

Vol. 372 2009/04/23

竹内 雅哲

オープンソースソフトウェアに注目する企業が増えています。しかし、オープンソースがどういうものなのか、どのようなメリットがあり、どのような課題があ るのか、についてはまだまだ認識されていないことが多いようです。キャッチボールニュースリニューアル第一回目の今回は、オープンソースとは何か、オープ ンソースのメリットや課題を解説しながら、オープンソースとの付き合い方を考えます。

 ●オープンソースとは

▲ Redhat
 
▲ eZ Systems
 
▲ NetCommons

皆さんの周りにオープンソースソフトウェアはどの程度あるでしょうか?代表的なオープンソースソフトウェアを挙げてみましょう。

Mozilla FireFox(ブラウザ)
Thunderbird(メーラー)
OpenOffice(オフィスソフト)
Linux(OS)
Apache(ウェブサーバー)
PostgreSQL(データベース)
・・・・

FireFoxは、Internet Explorerの代替、Thunderbirdは、Outlookの代替として使われます。OpenOfficeは、自宅のPCにMS Officeの代替として入れて使っている方も多いのではないでしょうか?世界的に見れば、Linuxのシェアは増加傾向にありますし、ネット上の環境で は、Apacheはシェア第一位です。このように、オープンソースソフトウェアは、私達の身の周りに確実に増えてきています。

一方、オープンソースとは何か、説明できる人は意外に少ないようです。オープンソースとフリーウェア(無料ソフト)を混同する場合も少なくなく、「無料である」ことがクローズアップされている感も否めません。
一 般的には「ソフトウェアの構造、設計情報にあたるソースコードが公開されていること」の意味で使われます。しかし、正確には、それだけではありません。本 来は、ソフトウェアのライセンスの一種です。オープンソースを認証する機関であるOpen Source Initiative(OSI)が1998年にOpen Source Definitionで以下のように定義しています。

  1. 再配布の自由 (Free Redistribution)
  2. ソースコードの公開 (Source Code)
  3. 派生物が同様に扱われること (Derived Works)
  4. 原作者のソースコードの全一性 (Integrity of The Author's Source Code)
  5. 個人やグループに対する差別の禁止 (No Discrimination Against Persons or Groups)
  6. 利用する分野に対する差別の禁止 (No Discrimination Against Fields of Endeavor)
  7. ライセンスの分配:追加ライセンスの禁止 (Distribution of License)
  8. 特定製品でのみ有効なライセンスの禁止 (License Must Not Be Specific to a Product)
  9. 他のソフトウェアを制限するライセンスの禁止 (The License Must Not Restrict Other Software)
  10. 技術的な中立 (The License must be technology-neutral)

 少し、専門的になりましたが、ここでは、オープンソースは、ライセンスの形態だということを理解していただきたいと思います。つまり、オープンソースを使うには、それなりのルールがあるということです。
 近年、「ソースの公開」という意味だけが取りざたされているために、派生物がオープンソースではないなどのトラブルが発生したり、オープンソースの中でもさまざまなライセンス形態が作られることで混乱が起きたりしています。

ちなみに、無償のソフトウェアという意味のフリーウェアは、ソースが公開されていないものも多く、オープンソースソフトウェアは、フリーウェアの一種と言えますが、オープンソース=フリーウェアではありません。

 ●オープンソースの強み

ライセンスの問題は一旦わきにおいて、ソースが公開されていることによって、どのような強みがあるのか、見てみましょう。

  • 無償で使える
  • カスタマイズ性が高い
  • 優れた機能性
  • セキュリティレベルが高い

無償、カスタマイズ性については、あまり説明の必要はありませんが、優れた機能性とセキュリティレベルについては、多少の説明が必要でしょう。

Linuxが、「無料で使える優れたOS」を作ろうという意思の下、開発者のスウェーデン人リーナス・トーバルズがソースを公開し、誰もが改良でき る状態にしたことで、世界中の優れた技術者がボランティア的に開発に加わって作り上げられてきたものであることは有名な話です。このように、広く使われる ようになるオープンソースソフトウェアは、多くの優秀な技術者の貢献によって作り上げられるもので、結果として、ある特定の企業が作るソフトウェアに比べ ても非常に優秀なソフトウェアを作り上げることが可能になるのです。しかも、無償で使えるようなソフトウェアを、です。当然、セキュリティレベルも高いも のが期待できます。中国が国家安全保障に関わるシステムにオープンソースを積極的に取り入れているのは、コードが公開されていないと、どのような脆弱性が あるかがわからず、早急な対応ができないことに加えて、そもそもセキュリティレベルが高いからだと言われています。

もちろん、オープンソースがすべて優れていてセキュリティが高いわけではありませんが、広く使われて実績のあるオープンソースソフトウェ アは、意図されたマーケティングによるものではなく、その機能面やセキュリティ面における品質によって実績を勝ち取っている、と考えて間違いなさそうで す。

 ●企業に注目されるオープンソース

こうした強みを持つオープンソースソフトウェアが近年企業に注目されつつあります。昨年11月にITアドバイザリ企業のGartnerが発 表した調査結果によると85%の企業(欧米、アジア太平洋地域)がオープンソースを導入していると言います。対象となるソフトウェアは、基幹系のものから ウェブ系のものまで広範囲にわたります。そして、オープンソースを導入する企業のほとんどは、一貫して「低コスト」を理由に挙げています。

企業の例ではありませんが、最近では四国中央市がOpenOffice.orgを導入を決定しました。5年間で3300万円の経費削減を期待しているとのこと。

一方オープンソース=低コストとは言えないという主張もあります。ソフトウェアそのものは無償であっても、カスタマイズなどの導入コストや運用コストは当 然かかりますし、トラブル時にどのように対応するかといったリスクマネジメントも必要だからということです。その主張も一理ありですが、ソフトウェアその ものが無償ですから通常はトータルコストは当然低くなります。ただし、オープンソースの取扱いに慣れている業者に相談するなどして、導入や運用を設計する ことが重要なのは言うまでもありません。

これらの事情は、弊社のNetCommons(ネットコモンズ)導入支援サイトに詳しく掲載しています。併せてご覧ください。

 ●オープンソース提供側の試み

最後にオープンソースを提供する側の試みについて少し触れます。オープンソースの歴史はまだ始まったばかりで、オープンソースをビジネスに するさまざまな方法が試されています。Red Hatは、他のライセンス形態を組み合わせて使うことによってビジネス化することに成功しました。開発元がサポートを有料で提供するといったeZ Publishのような形態も出てきています。また、開発元でなくても、前述のようにオープンソースの導入や運用のサポートを行うサービスを行う企業は弊 社も含めて増えてきました。
 資金調達という視点でも、新しい動きがあります。米国では、オープンソースの開発をする会社にベンチャキャピタルが出資するケースなどもあり、あるビジネ スモデルの中にオープンソースを位置づけるという手法も模索されているようです。弊社が取り扱うNetCommons(ネットコモンズ)は、国立の機関 (国立情報学研究所)が開発するという意味でも新しい試みと言えるでしょう。

さまざまなメリットを持つオープンソースはさらに普及していくものと思われます。システム投資の予算が削られる昨今、オープン ソースを上手に使って導入していくことで、効果的(低コストで機能的)なシステムを構築していくという選択肢は、ますます無視できないものになっていくで しょう。

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