~ ネットコモンズ(NetCommons):次世代の情報共有基盤
Vol. 379 2010/04/13
竹内 雅哲
コンテンツマネジメントシステム(CMS)のニーズが高まってきています。ウェブサイト構築・運営にCMSを使わないと余計なコストが増大することが広く 認識されてきたのだと思います。また、ブログが普及したことで、ブログエンジンを使ってサイトを構築するケースが多くなると同時に、ブログエンジンにはな いCMS機能を求めるサイト管理者が多くなってきているという背景もあります。
そうした中、オープンソースCMSのネットコモンズ(NetCommons)のVer.2.0が昨年夏にリリースされ、その後進化を続け(この夏には、 Ver.2.2がリリースされます)、確実にユーザを増やしています。非常に特徴的で将来性が高いCMSとして、キャッチボール21では強く推していま す。
●国家予算で作られたCMS
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| ▲ 「国立情報学研究所」 |
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| ▲ 「杉並区立消費者センター」 |
まず第一の特徴は、国家予算で作られているオープンソースCMSであるということです。
開発元は、国立情報学研 究所(NII:National Institute of Informatics)で、社会共有知研究センター長で数学者の新井紀子教授が開発リーダーを務めています。2001年から開発が始められ、2005年 にオープンソース化し、2008年には、Ver.2.0がリリースされ、機能も大幅にアップして、ライセンスもGPLからBSDとなりました。
国家プロジェクトであることで、「予算が打ち切られれば、なくなってしまうのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、このご時世に特定の会社の CMSに頼るよりもオープンソースを利用することの安定感と、そのオープンソースの中でもボランタリーなコミュニティに支えられるのではなく、公的機関が コントロールしているという背景などを考え合わせると、十分持続可能なCMSであると評価できます。また、後述のように実績を出していますので、少なくと も近い将来に予算が打ち切られる可能性は非常に低いと予想されましょう。
※ネットコモンズ(NetCommons)は、3rd International Software Competition(2007年、第3回国際ソフトウェア競技会)で最優秀賞を受賞しています。また、新井紀子教授は、2008年文部科学省科学技術 政策研究所「ナイスステップな研究者」を受賞しています。
●学校教育を想定したCMS
もともと、ネットコモンズ(NetCommons)は、学校教育を想定して作られました。学校のウェブサイトは、ITに明るい先生が立ち上 げたものの、その先生が異動したり、運営に大きな負荷がかかったりして、更新されずに古い情報が残ってしまう、ということがありがちです。また、教員間で 情報を共有するプラットフォームがなかったり、一般的にも求められている保護者と学校の情報共有のためのコミュニティサイトなどもなかなか立ち上げるのは ハードルが高いものです。つまり、ウェブサイトの構築・運営には、ウェブに関する特殊なスキルが必要であるというのが現状なのです。
そこで新井紀子教授は、ごく一般的なITリテラシーでもサイトを構築、運営できるためのプラットフォームとしてネットコモンズ(NetCommons)を 開発しました。ごく一般的なITリテラシーとは、デジカメが使える、メールに添付ファイルをつけて送ることができる、ワープロ、表計算ソフトの簡単な操作 ができる、程度のことを指します。
CMSの謳い文句として、「Wordを編集するようにウェブページが作れます」という文言がよく使われますが、ウェブページを作ることはできても、サイト 全体を管理したり、コミュニティサイトを管理するのは、なかなかそうはいかないものです。しかし、このネットコモンズ(NetCommons)は、すべて ブラウザ上で管理することができます。
もちろん、ブラウザ上ですべてを管理するので、自由にならない部分はありますが、ごく一般的なITリテラシーでサイトを構築、運営できるようなプラットフォームという意味で、大きなイノベーションをもたらしたと言えましょう。
●三つのスペース
ネットコモンズ(NetCommons)は、大きく分けて三つのスペースに分かれています。
これらのスペースの中に、ルームを作成し、それぞれのルームにさまざまな権限を付与したユーザをアサインします。そうすることによって、「私たちが自然に 行っているさまざまな情報共有のレベルやふるまいのコントロールを、無理なく自然に表現するための枠組み」(新井紀子教授談)を実現しているのです。もち ろん、こうした権限付与は、ブラウザから詳細に設定することができます。
ルームの中では、ページを作成し、そのページ上にモジュールを展開します。モジュールは、機能ごとにパッケージ化されていて、お知らせ、ブログ、掲示板、 カレンダー、Todoリスト、キャビネット(書庫)、アンケート、小テスト、汎用データベースなど30種類ほどが公開されています。上述の権限は、これら のモジュールを操作する権限に反映されます。もちろん、機能追加したい場合は、モジュールを開発してネットコモンズ(NetCommons)上で展開でき ますから、拡張性もあります。
上記のような機能・特徴をもったネットコモンズ(NetCommons)ですので、実は、教育現場のみならず、以下のような場面にも十分使えるプラットフォームであることがお分かりいただけると思います。
●ネットコモンズ(NetCommons)の実績
このネットコモンズ(NetCommons)は、IT業界ではまだほとんど無名のソフトウェアですが、教育界では知る人ぞ知るソフトウェア で、2000サイト以上がこのネットコモンズ(NetCommons)で構築されています。教育界以外でも、公的機関がネットコモンズ (NetCommons)を採用する例も増えてきており、今後も教育界、公的機関での採用は増えていくでしょう。
IT業界、ビジネス界での普及はこれからだと言えますが、すでに短期間で機能的なサイトを構築するために使われ始めていますし、イントラネット上で社内の グループウェア・情報共有基盤として使っている企業もでてきています。これからが楽しみなソフトウェアとして是非注目していただければと思います。
ネットコモンズ(NetCommons)の導入事例(一部)
※国立情報学研究所のウェブサイトはキャッチボール21が構築しました。また、researchmapでは、キャッチボール21が開発したモジュールが使われています。