~増え続ける製品・サービスを整理して位置づけて、俯瞰してみましょう
Vol. 398 2010/05/31
原田 慎太郎
2010年5月20日、検索サービス大手のグーグルが「Google TV」と呼ばれるものを発表しました。
ソニーや米インテルなどと共同開発した、テレビで検索や動画再生などのインターネットサービスが利用できる新システムです。
ソニーは今秋、このシステムを採用したテレビを米国で発売する予定です。
新しい製品・サービスは、今後もどんどん出てきます。
今回は、増え続ける製品・サービスを整理して位置づけて、そこから俯瞰してみたいと思います。
●「テレビ」って何だろう?
「Google TV」という言葉から、そもそも「テレビ」って何だろう?と考えて特徴を整理してみます。
「テレビ」とはテレビジョンという遠方へ映像を送る技術を用いた映像受信装置です。
テレビジョンのテレ(tele)はギリシア語の「遠く離れた」、ビジョン(vision)はラテン語で「視界」という意味だそうです。
昔、多くの家の屋根にはテレビアンテナがあって、それを使って受信していました。
テレビの上に小さなアンテナを乗せていたこともありましたね。この話は時代を感じますね。
つまり、「テレビ」は電波(無線)を使うものです。
「テレビ」は映像の受信装置ですから、映像の送信側が必要です。
映像の送信側とは「放送局」です。
「テレビ」の側からは映像を送信することはできません。
放送局が出てきましたので「放送」とは何かを見ておきます。
放送法によれば「放送」とは「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」(第2条1項)となっています。
「テレビ」の特徴を以下のように整理してみます。
●「電話」って何だ?
「テレビ」の特徴を整理したので、次に「電話」の特徴を整理してみましょう。
家にある「電話」機を思い出して下さい。
電話線でつながっています。話す相手は、たいていは一人です。こちら側も相手側も同時に話すことができます。
「電話」とは以下のような特徴を持っています。
ここで、「テレビ」と「電話」を並べてみます。
「テレビ」と「電話」は、いわゆる「放送」と「通信」の特徴をとてもよく表しています。
言葉を整理してみます。
ここで考えてみてください。
技術の進歩により、「テレビ」にも有線を使ったものがありますし、「電話」にも無線を使ったものがあります。
代表的なものが「ケーブルテレビ」と「携帯電話」です。
上記の表に、製品・サービスとあわせて付け加えて整理してみます。
またまた、ここで考えてみてください。
最近の「テレビ」の世界では、「地上デジタルテレビ放送が始まります」という話を耳にします。
いわゆる「アナログ」と「デジタル」の話です。
少しだけ「アナログ」と「デジタル」についてお話をしましょう。
●「アナログ」と「デジタル」
難しい話はしないことにして、簡単な例で特徴をつかんでみます。
時計を思い出してください。デジタル時計とアナログ時計です。
デジタル時計は数値で表現されています。アナログ時計は針の動きで表現されています。
デジタル時計は1秒1秒が明確に表示されます。対するアナログ時計は、1秒と1秒の間に針の移動があり、1秒より細かい時間を表現しています。実際には気にする方は少ないと思いますが。
連続した「アナログ」の方が、デジタルよりも細かな値を表現しています。
実際に「アナログ」を「デジタル」に変換する際に劣化が起こります。これを「量子化雑音(Quantization noise)」と言います。これはアナログ値とデジタル値の量子化誤差によって生じるものです。
失礼しました。難しい話はしないのでしたね。
「アナログ」は連続した値を表現し、「デジタル」はとびとびの値を表現している。感覚として理解していただけたでしょうか。
「アナログ」と「デジタル」を比較すると、その特性から、「デジタル」の方が多くの情報を扱うことができます。
音声でも映像でもどんな情報でも、「デジタル」にしてしまえば全て同じに扱えるというのも、「デジタル」のよい点です。
また「デジタル」の方がノイズ(雑音など)に強いという利点があります。
多くの利点から、「アナログ」から「デジタル」への変化が進みました。
先程の表に、「アナログ」と「デジタル」を付け加え、代表的な製品・サービスを記載してみましょう。
●「テレビ」と「電話」
先程の表を眺めていると気づくことがあります。
最近の「テレビ」では、画面を見てアンケートに答えたりできるでしょ?と。
また、「電話」だって、テレビ会議のように複数の相手と話ができるじゃないか?と。
その通りです。誤解を恐れずに表現するならば、「デジタル」のおかげで、「テレビ」と「電話」の特徴が近づいてきています。
「アナログ」と「デジタル」という視点から、先程の表を整理してみます。
上記の表を眺めてみますと、「アナログ」→「デジタル」への変化により、「放送」と「通信」の違いが少なくなっていくことがイメージできます。
●「インターネット」って何だろう?
「インターネット」の話をしていませんでした。
「インターネット」は、コンピュータ間をつなぐネットワークです。
コンピュータ間をつなぐので、「インターネット」は「デジタル」の世界です。
今までの「インターネット」は、コンピュータ間をつなぐネットワークであり、「テレビ」でもなく「電話」でもありませんでした。
しかし、「デジタル」の特徴を生かして、「テレビ」でもあり「電話」でもあることができるようになりました。
「テレビ」に近いサービスとしては「Ustream(ユーストリーム)」があり、「電話」に近いサービスとしては「Skype(スカイプ)」があります。「Skype(スカイプ)」は電話に近いというより、「電話」そのものですね。
ではここで質問です。
「インターネット」は、「有線」でしょうか?「無線」でしょうか?
「有線」でもあるようだし、「無線」でも利用できるから「無線」でもあるように思う。
とても答えにくい質問ではないでしょうか。
パソコンは「有線」でつながっている場合もありますし、スマートフォンでは「無線」が当たり前です。
答えを言いますと、「インターネット」は、「有線」も「無線」もどちらも使いますので、どちらでもあるというのが答えだと思います。(正確には、「インターネット」と「有線」「無線」とは同列には比較できない技術分野ですので、上記は大まかに捉えた話です)
「インターネット」という視点を、先程の表に追加してみます。
上記の表を眺めてみますと、「 デジタル」の普及で「通信」と「放送」の違いが少なくなり、「インターネット」は、「電話」を取り込み、「テレビ」まで取り込んで行きそうです。
●「インターネット」と「放送」「通信」
「インターネット」は、「有線」であるか「無線」であるかを意識せず、いつでも誰とでも情報を交換できるインフラとなっています。
表から読み取れることは、今後、発表される製品・サービスは「インターネット」の利用を前提として、その拡大をもたらす方向のものであるということです。
今回、グーグルが発表した「Google TV」により、「インターネット」による「放送」の取り込みを決定的とするかもしれません。
しかし、「テレビ」というからには、何を見せるのか、何が見られるのか。「番組(コンテンツ)」は課題となりそうです。
今回の「Google TV」では、「放送」という意味での「多:多(多くの人達が相互につながる)」までは具体的に提案されていないようですが、Androidアプリを使うことができるので、フォトビューワーや音楽プレーヤーをインストールして、今までのテレビを超える使い方ができるようになります。
インターネットの利用拡大が進み、「多:多(多くの人達が相互につながる)」という「放送」が実現したとき、皆さんはどのような映像を誰に送りますか?
かつて話題となったものに「テレビ電話」があります。
最近では、すっかり使っている人を見かけません。
利用者にとっては声だけで十分で、映像はいらなかったということなのでしょう。
「放送」と「通信」は技術の発展により境目がぼやけてきていますが、組み合わせによっては利用されない製品・サービスを作り出してしまいますね。
「Google TV」はどうなりますでしょうか。
今後の展開がとても楽しみです。