~ 個人が主役となる金融マーケット
Vol. 416 2011/09/21
伊藤 香代子
「ソーシャルレンディング」をご存知でしょうか。
実は2008年頃に話題となり金融機関の流通革命とも言われていましたが、当時まだあまり知識もなく、日本で本当に根付いていくのかな?と思った記憶があります。ところが最近こんな発表がありました。
「日本初、ソーシャルレンディング「maneo」成立ローン総額が10億円を突破!!!(会員数も21,000人突破しました)」
https://www.maneo.jp/apl/information/news?id=389
「ソーシャルレンディングAQUSH ローン申込総額が20億円を突破 2011年6月末の実績を発表。ユーザー数5,205人、平均投資利回り7.69%」
https://www.aqush.jp/aboutUs/news
日本には、すでに3つのソーシャルレンディングが存在し、利用者も拡大しているようです。欧米ではすでに急成長をしている「ソーシャルレンディング」について取り上げてみました。
● ソーシャルレンディングとは
「お金を借りたい個人」と「お金を運用したい個人」をオンライン上でマッチングする、金融サービスです。PtoP金融(Person to Person、peer to peer)とも言われます。個人がお金を借りたいと思った場合、銀行や消費者金融以外の選択肢があまりないのが現状でした。信用はあるけれど審査等のハードルが高く時間も手間もかかる銀行と、借りやすくともネガティブなイメージがあり、金利も高い消費者金融。ソーシャルレンディングはその中間に位置するサービスだと言われています。またお金を運用したい側にとっても、預金利率の低い今の時代、投資先が明確で、高い利息を受け取れる可能性があるソーシャルレンディングには新しい金融ビジネスの可能性があると言われています。
● ソーシャルレンディングの歴史
2005年にイギリスのZopa(ゾーパ)が世界で初めてサービスを開始。2006年にアメリカのProsper(プロスパー)、2007年にアメリカのLending club(レンディングクラブ)と欧米、さらには中国や韓国でもすでに沢山のwebサービスが運営されています。折しも2008年にはサブプライムショックがあり、世界的に銀行の中小企業や消費者への融資の審査が厳しくなっていることもあり、ソーシャルレンディング市場が急速に拡大していく背景ともなりました。
Zopaは、創業6年目を迎え、総額で125万ポンドの融資を実行し、月に5万ポンドのペースで融資実行額を増加させているそうです。
● 日本のソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングには、利率・金利の決定の仕方により「オークション型」と「マーケット型」があり、日本の3つのソーシャルレンディングは、オークション型の「Maneo」、マーケット型の「AQUSH」「SBIソーシャルレンディング」とに分かれます。
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| maneo |
【オークション型】
オークション型の代表といえば、「maneo(マネオ)
」です。
2008年10月、日本初のソーシャルレンディングサービスを始め、草分け的存在です。ボロワー(借手)とレンダー(貸手・投資家)をオークション形式でマッチング。ボロワーが借入の目的や今後の計画性などをアピールし、レンダーは、そのアピールを判断材料にして融資先と金額を決定するというものです。ボロワーは借入の希望金額や期間、金利、使用目的を申告。それをオークションにかけ、通常、最も安い金利を入札した順にレンダー達の融資が決定します。
オークション型のメリットは、匿名性を保ったSNSを通じてボロワーとレンダーが直接コミュニケーションを取れる環境が整っているため、ボロワー自身が借入理由や自身の信用性などをアピールする場があり、またそれに対しレンダーは自らの基準で相手の信用性を判断して投資の意思決定が出来ます。金融市場の相場や一般利率に左右されないため、共感を持つレンダーを複数集めることが出来れば、相場よりも低い金利で融資が成立する可能性があります。また、レンダーにとっても預金より高い金利を期待できるだけでなく、融資先を自ら選択できることで、ただお金を稼ぐというだけではなく、一種の「ソーシャルリターン」(=誰かが欲しいものを提供してあげることで自分自身も喜びを得られる)体験が得られるといいます。
【マーケット型】
マーケット型には、「AQUSH(アクシュ)
」「SBIソーシャルレンディング
」があります。
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| AQUSH | SBIソーシャルレンディング |
「AQUSH」は、2009年12月にスタート。平均貸出金利が低く、登録者が増えていることで話題です。「SBIソーシャルレンディング」は、2011年3月、日本の大手金融グループで初めてソーシャルレンディングサービスに参入をし、その信頼度の高さから注目を集めています。
マーケット型は、借手が借りたい金額や個人情報を運営会社に送信し、その後運営会社の審査によって借手の信用度が独自に格付けされます。貸手はどの格付けにどのくらいの金利で、いくら投資するかを決めることができ、借手は格付けランクが高いほど低い利率で借りることができます。つまり、審査で信用性の高い借手は低金利で借入ができるのです。そして運営会社は貸手から出資された資金を、借手の希望条件に合った借手とマッチングさせます。マーケット型と言われる所以は、貸し手のリスク許容度や希望利回りに応じて金利がタイムリーに変動し、あたかも株式市場のような動きをするからです。
マーケット型のメリットは、借手はインターネット上でオークションを行う必要がないため、借入がスピーディーに行われるところにあります。貸手にとっては、自動的に分散投資が行われ、利便性と低リスクであることがあげられます。
● ソーシャルレンディングのメリット・デメリット
ソーシャルレンディングの場合、個人と個人の間に金融機関を通さず金融流通の効率化を図ったことや、オンラインであることをフルに生かし(人件費や広告宣伝費、店舗費用等のコスト削減)ていることがユーザへのメリットに繋がっています。
【借手にとってのメリット】
・インターネットを利用しいつでもどこからでも参加できること
・通常より低金利で借りられる可能性があること
・資金使途は自由。
・無担保・無保証
【貸手にとってのメリット】
・銀行などの定期預金よりも高い金利が得られる可能性があること
・リスクに応じて希望の利回りを設定可能
・小さい金額から投資が可能(リスク分散が可能)
・誰かの役に立つ直接の投資ができること(オークション型の場合)
デメリットは、前提条件として、借手側からの返済が滞った場合、出資金の元本額が全額返ってこない場合があるということです。但し、そのようなことになれば、サービス提供側にとっても痛手な為、さまざまなリスク回避やトラブル対策が取られています。
上記の3社とも、お金を貸す事業に対して投資家から匿名組合出資の方式でお金を集めて、そのお金を貸し出すという点については同じ仕組みですが、maneoだけは、「どういった人にどういった目的で貸し付けるのか」をオープンに見せて投資の募集を行っているという点が大きな違いであり、また面白いところです。
実は、さきに挙げたZopaは、マーケット型・オークション型の2種類のローンを扱っていましたが、最近コミュニティ上で借手の情報を一覧表示することをやめ、マーケット型のソーシャルレンディングに集中する方針をとったそうです。またその一方で、アメリカでは、オークション型ソーシャルレンディングの比率が圧倒的に多いのだそうです。国が違えば、文化も国民性も違い、法律も異なるため、ソーシャルレンディングも国ごとにビジネスモデルの違いが出るのかもしれません。
低金利が続く中、投資家からソーシャルレンディングに注目が集まっていることもあり、2011年が日本のソーシャルレンディング拡大の年になるのかなと睨んでいたのですが、国内での知名度であったり、信用に繋がる実績等、もう少し先のことになるかもしれません。
貸す側と借りる側の個人が金融機関を通さずに様々な選択肢を選べることが実現した時に、日本の金融業界がどう変化しソーシャルレンディングの3社の業績やビジネスモデルがどのように変化していくのかが楽しみです。
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参考:
・「ソーシャルレンディング AQUSH(アクシュ)」
http://www.facebook.com/aqush
・「ソーシャルレンディング比較」
http://sociallending.jounin.jp/
http://aqush.naion.biz/