巨大フリー百科事典「Wikipedia」

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巨大フリー百科事典「Wikipedia」

〜 不特定多数による共同編集は信頼できるか?

Vol.295 06/03/16

▲ Wikipediaトップページ
▲ Wiikipedia日本語トップページ 

2005〜2006年のインターネット界最大のキーワード「Web2.0」が語られるとき、必ず取り上げられるのが「Wikipedia(ウィキペディア)」です。
また、用語の検索結果としてWikipediaに行きあたった経験を持つ方も多いと思います。 今回はWikipediaの特徴および賛否論についてお届けします。


●インターネット空間の巨大フリー百科事典「Wikipedia」

「Wikipedia」はインターネット上に構築された、ユーザー参加型の巨大な百科事典です。
300万を超える項目中、英語版の項目数は「約100万」日本語版はドイツ語フランス語についで「約19万」です。(2006年3月10日現在)
英語版Britanica百科事典では「約7万項目」、ちなみに、Oxford Englishi Dictionaryが30万語、広辞苑が23万語ですから、Wikipediaの巨大さがご理解いただけると思います。

Nielsen/NetRatings社の2005年9月の調査によると、Wikipediaのアクセス数は月間1,280万人で、Alexaの2006年2月のアクセス数ランキングでは全サイト中18位(2005年12月では25位、8月では50位)と、更に急激にアクセス数を延ばしています。

オンライン事典「Wikipedia」の利用者が急増、1年で2.8倍に (nikkeibp)
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/it/422597

Educational Reference Web Sites Spike 22 Percent in Year-Over-Year Growth, Led by Wikipedia and Yahoo! Education, According to Nielsen//NetRatings
http://www.nielsen-netratings.com/pr/pr_051013.pdf


●Wikipediaの特徴

特徴は、

  • 200を超える言語がカバーされている
  • 総計300万以上の項目を持つ
  • リアルタイムで改定がされており、時代に即した新項目が日々追加されている
  • ボランティアによって運営されている
  • 不特定多数無限大の人が、誰でも匿名で書き込みが自由である

等で、もちろん無料で使用することができます。

「ボランティア」「誰でも匿名で書き込みが自由である」というと、「2ちゃんねる」を思い起こす人が多いでしょう。ではWikipediaは2chとどう違うのでしょうか?しかも単なる掲示板ではなく百科事典なのです。

Wikipediaの構造は2chよりも更に過激です。それは、2chはあくまでも自分の投稿ができるだけですが、Wikipediaでは他の人が書いた文章を書き換えてしまうことができるからです。

市販の百科事典は、その分野の専門家が執筆し、推敲編集されて人の目に触れるのですが、Wikipediaには定まった著者も編集責任者もなく、1つの項目に多くの人が関わり、間違った記述を修正し、不足を補いながら日々成長していく、という過程を踏んでいきます。

より過激ですね。そんなものがいやしくも百科事典として役に立つのでしょうか?

疑問(1):誰がどんな資格で書いているのか?
疑問(2):一部のプロパガンダに利用されてしまうのじゃないか?
疑問(3):あきらかな間違いがあるじゃないか?
疑問(4):間違いは誰がどうやって正すのか?

しかし、そもそもリアル世界で活字になって流通しているものだからといって、声高の一部の主義者たちのプロパガンダに利用されていないのでしょうか?何をもって彼らは有資格者なのでしょうか?百科事典には間違った記述はないのでしょうか?

こんな調査があります。


●Wikipediaの信頼性をめぐって(支持派)

米の科学専門誌「Nature」が、2005年に英語版WikipediaとBritanica百科事典を対象とし、各分野の専門家に調査を依頼するという興味深い調査を行っています。

結果、科学に関連する42の項目中、本質的で深刻なミスはそれぞれに4項目あり、誤記などの軽いミスでは、Wikipediaでは1つの記事あたり平均3.9件、Britanicaは2.9件発見された、ということです。

Internet encyclopaedias go head to head
http://www.nature.com/nature/journal/v438/n7070/full/438900a.html

▲ Nature誌記事

少なくとも科学分野でのWikipediaの信頼性は、ブリタニカ百科事典と同レベルであることがわかりましたが、私も含めた活字崇拝派としては“あの”Britanicaにそんなにもミスがあるのか…ということ自体が衝撃的でした。

Wikipediaは、黎明期からのインターネットの思想がストレートに反映された試みだと思います。
思い出してみましょう、そもそもインターネットに惹かれたのは、簡便さ、自由さ、オープンさでした。しかもそれでかつワールドワイド。思想の基本にあるのは「性善説」と「集合知」なのです。
Wikipediaの試みは、初めてインターネットに触れたときの気持ちを思い起こさせてくれます。
そういった意味でも、Wikipediaは最も「Web2.0」的、いえ「Web」的サイトのひとつだと思います。

はたして、我々がインターネットを知った以後の世界でも、集合知は一部識者の専門知識に劣るのでしょうか?
Amazonのユーザー自身によるカスタマーレビューの成功は、インターネット界をアマチュアによる評価一色にしてしまったことを思い出してしまいます。


●Wikipediaの信頼性をめぐって(不信派)

Nature誌の記事が出たと同じ2005年、Wikipediaに個人を不当に中傷する記事が掲載され、本人から指摘され、削除されるまでに数ヶ月かかってしまった、という事件がおこっています。
さらに、Wikipediaの記載が提携先の「Reference.com」と「Answer.com」に自動的に転記されるシステムになっていたため、問題はより増幅されてしまいました。

この問題を大きく論点としているのは『ITにお金を使うのは、もうおやめなさい』の著者ニコラス・カーです。
カーが懸念しているのは、Web 2.0がもたらす世界が必要以上にもてはやされ、それによって引き起こされる弊害についての議論が充分になされていない、ということです。

The amorality of Web 2.0
http://www.roughtype.com/archives/2005/10/the_amorality_o.php

中傷に近い誤記に気づいた本人は、すぐにWikipediaの責任者に連絡を取りましたが、誰がこの記事を書いたかは把握できない、というのがWikipedia側の答でした。

記載日の5月26日から4ヶ月以上たった10月5日、やっとこの記事はWikipediaから削除されました。Reference.com と Answers.com から削除されたのは、さらにその3週間後でした。
結局、誰がこの記事を書いたのかは、不明のままだということです。

膨大な数の不特定多数無限大の書き手によってなりたっているWikipediaの、記載内容の正確性を疑問視する声はあって当然です。しかし、それゆえの項目数の多さや速報性こそが、他の市販の百科事典に対しての差別化となっているのです。

上記の事件で明らかになったのは、誹謗中傷記事に対するWikipedia側の対応が、極端に遅かったということに加えて、誹謗中傷を行った人物が特定できず、野放しになってしまったままだということでしょう。

以前は誰でもが匿名で項目を立て、記事を記述/変更ができたのですが、事件以降、登録ユーザーのみが項目が立てられるように、早速変更されました。
さらに、ボランティアが新しい書き込みをチェックしているということですが、その数はあまりに少なく、基本的には性善説に基づく自浄作用にまかさせているのが実情です。


●Wikipediaをレファレンス・ツールとして使用する

▲ FirefoxにWikipediaを登録する

Wikipediaの多くの記事は信用に値するが、すべての記事が正確に記述されているわけではない、すべては自己責任で…という常識的な結論になってしまいそうです。

更に、出典および著者の記載が必須の学術論文には、Wikipediaは引用することができないのが現実です。

しかし、入門レベルで何かを知りたい時には、とても便利なツールです。
なんと言っても、Wikipediaは項目数が圧倒的に多く、市販の百科事典にはないマイナーな単語や新しい事項を知りたいときには最適です。
外部リンクも多く、情報を深めていくには絶好なツールでもあります。

Wikipediaというサイトがどういう仕組みで成り立っているのか読み手が知っていれば、なんの問題もないのです。書かれていることを無条件に信じてしまうことの方が問題なのではないでしょうか?
これは、Wikipediaに限らず他のメディアでも同じです。

知りたい単語があれば最初に引いてみる「レファレンス」としてのWikipediaが私の使用法です。そのために常用ブラウザー「Firefox」の検索窓にWikipediaを追加登録しています。

Firefoxに世界のWikipediaを登録
http://mycroft.mozdev.org/quick/wikipedia.html


●永遠のβ版

必ずしもWikipediaで完結する必要はなく、とりあえず最初に見るWEBページとしての利用がベストです。完璧さを求めるのならば、ユーザー自身で精度を裏打ちしていけば良いのです。
日本語版はまだまだ発展途上で、意中の項目がないこともままありますが、数日後にはしっかりした記事が載っていることもありました。Wikipediaは日々成長しているのです。

百科事典の各項目は、いわゆる“識者”によって記述されなければいけないのでしょうか?
不特定多数による集合知は、一部エスタブリッシュメントの知恵に劣るとまだ思っていますか?

情報収集にはWikipediaの使用をお勧めします。
また、 記事にあきらかな間違いがあれば、進んで修正してください。必須と思われる項目があればぜひ追加してください。
Wikipediaは永遠のβ版であることに、その存在意義を持っています。

- [ 堀越 正男 ] -
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