HTML5 が話題になる理由

201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996

HTML5 が話題になる理由

〜 大きく進化する次世代 HTML

Vol.389 09/12/24

▲ 「HTML5 Canvas and Audio Experiment」
web標準をめぐる動きがにわかに騒がしくなっています。
2009年5月に開催された開発者会議「Google I/O」。このイベントでGoogleのCEOが「webのプログラミングモデルが主流となる時を迎えた」と開会直後に宣言。そしてその会議での内容は、Googleが「今後の技術的な標準を『HTML5』においた」ことを明確に示す内容だったと言われています。

web業界を牽引するGoogleからの発表。それは一体どのようなことを意味するのでしょうか。今回は「HTML5」について取り上げたいと思います。


●web標準とは?HTML5に進化するまでの背景

上記に挙げた「web標準」とは、W3C(※1)が勧告しているWWW関連の規格のことです。ソフトウェアにバージョンがあるように、HTMLにも歴史と共にバージョンが存在します。
web創成期、HTMLは本来文書構造を示すためだけに開発されたシンプルなものでしたが、機能強化や表現に対するユーザと制作者、両者からの要求に対応することで拡張され改善が進められてきました。
もともとSGML(※2)という論理的な構造を記述するマークアップ言語であるべきという源流とも言えるルールがありましたが、HTMLはバージョン3.2において、レイアウトを美しく整形する目的の属性が広範囲に提供され、その精神からは大きく逸脱していく事になっていきます。

ブラウザ戦争(※3)も重なり、各webブラウザがシェアを奪取する為の差別化を優先し、web標準とは異なるレンダリングエンジンをこぞって採用したため、同じHTMLでもOSやブラウザにより見え方が変わる、レイアウトが崩れるなど、結果ユーザにも開発側にも不利益な状態をもたらすこととなってしまいました。
これらのことは問題視され、HTML 4.0以降本来の原則に回帰する方向に改善が進められましたが普及は明確に進まず、今も数々の問題が残されている状態です。


●webが進化する上でHTML5が欠かせない理由

その間、webではFlashやAjaxなど目を見張るような技術が誕生し、普及してきました。
そして先に挙げた開発者会議から2ヶ月後、W3CはこれまでHTML規格として策定を進めていたXHTML2の策定作業終了を宣言し、今後はHTML5に注力することを発表しました。
以下にHTML5の大きな特徴を書き出してみました。
HTML5はHTML4のバージョンアップという位置づけですが、これまでのHTMLやXMLと大きく異なることがわかります。

  1. HTML5は、Webアプリケーションのためのweb標準である

    GmailやGoogleマップを初めて見たとき、衝撃的ではありませんでしたか?
    紙芝居をめくるように遷移するwebページとは違い、ドラッグ&ドロップが出来、リアルタイムに反応が返ってくる様はデスクトップの感覚に近く、web上でもこんなことが出来るんだと感嘆しました。
    それと同じようなことが、HTML5をベースに、CSS、JavaScriptを組み合わせてより効率良く実現できるよう策定が進められています。

  2. HTML5は、クロスプラットフォームである

    作ったwebサイトやアプリケーションが、「どんなプラットフォームでもOSでも同じように表示し動作する」ことは究極の理想です。移植作業にかかる時間やお金が不要になることは、素早く多くの環境にサービスを提供出来ることでもあり、開発側だけでなくユーザにとっても大いに有益です。
    HTML5は、webだけでなく、モバイルデバイスや、今後、家庭用電子機器など広範囲な開発に活用されていくことが示唆されています。

  3. HTML5は、「仕様による標準化」である

    今までの競争は、OSやwebブラウザに依存するために引き起こされたものでもありました。しかし開発者が標準仕様であるHTML5に沿って開発をすれば、OSもデバイスも関係なく、特定のベンダーのプラットフォームにも縛られることなく様々な環境にアプリケーションを展開することが出来るようになります。
    Webブラウザに関して言えば、最新のモダンブラウザはすでにHTML5に対応しはじめています。結果的にHTML5に準拠していることが競争の前提となっているのです。今までのように独自仕様を競う競争ではなく、より高速に・安定して・拡張性に優れ・使い易いという方向で進むことが期待される部分です。


●もう活用され始めている次世代HTML

新しい技術も実際に活用される場があり、普及しなければ意味がありません。
webブラウザ別に、又機能毎にこちらで細かく対応状況が紹介されています。

▲ 「Chrome(Win)のHTML5対応状況」
最新版のSafari、Firefox、Chromeとすでに対応が進んでいることがわかります。
特徴的なのは、IEでしょうか。先に紹介をした開発者会議でも最大シェアを持つIEの対応が一番遅いと皮肉たっぷりに紹介されていましたが、遅れること数ヶ月の11月、Microsoftはまだ開発に着手したばかりの次期ブラウザ「IE9」を紹介。HTML5などの新しいweb標準に準拠していることをアピールしました。HTML5という土俵の上で熾烈なシェア争いはすでに展開されています。

また次世代の技術と銘打っていますが、実はHTML5を実装した機器はすでに発売されています。6月にアメリカで発売された「Palm Pre」です。アプリケーション・ソフトウェア開発のプラットフォームをweb技術で固めた初めての機器と言われています。
「Palm Pre」は、スマートフォンです。今日本で急激に人気があがっているiPhoneやAndroid携帯も実はHTML5の標準機能を利用して作られています。webの技術でありながら、webよりも先にモバイルでの活用が先に進んでいくかも知れません。
このことは、HTML5がクロスプラットフォームであることを物語っています。


●目で見るHTML5

使われている機能によりブラウザの対応にまだバラツキがある為、目で見てその進化ぶりをお伝え出来るwebサイトがまだあまりないのですが、以下の2つはどちらも本来ならFlashでないと実現できなかったwebサイトです。(HTML5に対応しているwebブラウザでご覧下さい)

▲ 「YouTube HTML5 Demo」
どちらもHTML5とCSS3、JavaScriptのみで実現されています。
YouTubeのデモサイトに至っては違いがわかりにくいですが、動画上で右クリックしてみると、Flashで動いているのではないという事がよく分かります。Flashのようなプラグインを使わずにJavaScriptベースでアニメーションや、動画のコントロールを実現出来るというのは大きな魅力です。


HTML5は、2010年9月に正式勧告を予定しています。HTML4.01の勧告から10年。その間に登場した新しいweb技術を統一した仕様になると言われています。完全にサポートされ開発側やユーザにその恩恵がもたらされるのにはまだ時間がかかるかと思いますが、飛躍的な進化を遂げることが出来るのか、要注目の技術であることは間違いありません。


※1 W3C
「World Wide Web Consortium」の略。WWWで使用される各種技術の標準化を推進、互換性を確保する為に設立された非営利団体です。http://www.w3.org/
※2 SGML
標準一般化マークアップ言語。Standard Generalized Markup Languageの略。
正しいマークアップが行われることで、異なるコンピュータ・プラットフォーム間で、読み込みと認識が実現可能となる。それを実現させる為の言語。
※3 ブラウザ戦争
ウェブブラウザを提供する各社・各団体による市場シェア争奪戦。
1990年代に起きたInternet ExplorerとNetscape Navigatorの猛烈な競争を第一次ブラウザ戦争、
2004年以降Mozilla FirefoxやOperaが市場シェアを拡大することでInternet Explorerに脅威を与え始めたことを第二次ブラウザ戦争と呼ぶことが多い。

- [ 伊藤 香代子 ] -

最新一覧 購読申込みはこちら
PAGE TOP